ツクツクボウシの例の鳴き声は妨害音か?

 ツクツクボウシが鳴き始めると近くにいた別のオスが”ジージュジュ・・・”というような鳴き声をだすことが良くある。この鳴き声は以前から呼応と妨害の相反する意見があり、最近では妨害しているという意見が多いように思うので真相に迫ってみる。
 普通に鳴いているオスは、例の鳴き声を聞いてもそのまま鳴き続ける。妨害だと仮定して見みると、なぜ妨害されているのに普通に鳴いているオスは逃げていかないのかということになり、妨害になっていないことに気づく。
 飼育によってこれ再現するのは簡単である。複数のオスを飼育装置に入れればよい。1オスが普通に鳴けば別のオス、が例の鳴き方をする。ツクツクボウシは複数のオスを飼育しても、複数のオスが同時に普通に鳴くことはないのである。複数のオスが同時に鳴かないセミは、ほかにミンミンゼミとオオシマゼミがいる。ミンミンゼミは誘い鳴きなら複数のオスが同時に鳴く。オオシマゼミは小さく”キ、キ、キ・・・”と鳴く。アブラゼミ、クマゼミ、ヒグラシ、エゾハルゼミ、クロイワツクツクなどは複数のオスが同時に鳴く。ニイニイゼミは複数同時に鳴くこともあるが、誘い鳴きばかりになったり、落ち着きがなくなる。沖縄のリュウキュウアブラゼミも複数のオスが同時に鳴くこともあるが、”ギチギチギチ・・・”という鳴き声をだすときもある。直し類ではクツワムシ、マツムシ、アオマツムシは複数のオスが同時に鳴くが、多くの種類は1オスしか鳴かない。飼育のスズムシも複数のオスが同時に鳴くが、すべて誘い鳴きである。初めは同時に鳴いていたセミも時間がたつと鳴いている個体が減ったりする。多かれ少なかれ、オスの本鳴きには周りのオスの発音活動を押さえ込んでしまうような働きがある。普通に鳴いているだけで、周囲のオスの発音活動を押さえ込んでいるのだから、改めて妨害する必要はないのである。それでは例の鳴き声は何なのかといえば、近くで別のオスが鳴きだすと、ツクツクボウシにしてみれば、いっしょに競い合って鳴き出したいところではあるが、オスどうしの距離が近すぎるため、押さえ込まれてしまい、正常に鳴けない。正常に鳴いてはいけない。そこで例の鳴き声で代用していると考えられ、呼応である。
 

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