蝉雑記帳2009




1、久高島


 5月3日〜5日、沖縄本島に来ていた。3日は出始めのクロイワニイニイでもいないかと思って読谷村の座喜味城跡へ行ってみたが、セミの声は皆無。4日はイワサキクサゼミ目当てに安座真港から久高島へ、安座真港周辺では普通に見られたイワサキクサゼミだが、久高島では散発的にしか鳴いていない。環境的にはアダンなどの低木が多いのにイワサキクサゼミが少ないのは謎である。ゴールデンウイーク中のこともあり、自転車に乗った観光客ばかり目立つ島だった。

久高島
久高島
久高島の環境
久高島の環境

 5日は遅い便の飛行機が取れなかったし、バスの時間も合わず、安座真港付近で少し、イワサキクサゼミの観察と撮影しただけで終わってしまった。観光客で混雑する空港、とても不況とは思えなかった。


2、壊滅的な伊良岬

 5月23日、今年も伊良岬国民休暇村付近に行ってみた。松枯れがさらに進み、ハルゼミの観察に都合の良い、海岸付近のクロマツ低木林も枯れて赤くなっていた。近くの公園では、枯れた木の伐採や農薬の散布などで、クロマツの保全に勤めているようだが、松枯れは深刻である。ハルゼミは松枯れと強風の影響もあり、鳴き声は少なかった。それでも、ほとんど枯れかけた松林から、ハルゼミの合唱が聞こえていたが、来年はないだろう。

枯れた海岸付近のクロマツ低木林
枯れた海岸付近のクロマツ低木林
ほとんど枯れた松林からハルゼミの合唱が聞こえる
ほとんど枯れた松林からハルゼミの合唱が聞こえる。


3、6月別所温泉のセミ

 6月7日、19日、27日、別所温泉周辺でセミの観察に都合の良いところはないかと思い、おもに別所温泉森林公園付近を調べた。 ハルゼミ、エゾハルゼミが多いのは比較的樹木の種類も多い森林公園から夫神山方面へ少し登ったあたりで、さらに登っていくと、杉やヒノキの植林になってしまい、セミの数も減ってしまう。しかも、木が高く、ハルゼミはアカマツの枝にいるのを単眼鏡で確認できたのが一度、エゾハルゼミも落葉樹の低いところで鳴いていたのを一度見ただけで、観察に都合が良いとはいえない。同時に2種類の声が聞こえるのが唯一の救いである。

森林公園から野倉へ向かう
森林公園から野倉へ向かう
夫神山
野倉から夫神山を望む
女神岳
夫神山の麓から女神岳を望む

 19日は森林公園から野倉をへて別所温泉駅まで戻った。森林公園から野倉にかけては杉の植林が目立つ、それでも少ないながら杉林の中からハルゼミ、エゾハルゼミの声が聞こえてくる。標高が下がり野倉周辺はハルゼミの合唱のみとなる。近くの女神岳からもハルゼミ、エゾハルゼミの声が聞こえていたが、数はあまり多くない。ナキイナゴだけが多かった。野倉から別所温泉までの間は、杉、松林、松が混じる雑木林でハルゼミのみが鳴く。ちなみに、別所温泉駅から森林公園までは2.5キロ、森林公園から野倉までも2.5キロ、野倉から別所温泉駅までは2キロあまりである。
 27日には標高の低いところで、早くもニイニイゼミが鳴き始めており、標高の高いところのハルゼミはまだ合唱が聞こえていたが、エゾハルゼミはだいぶ少なくなっていた。これらのことからハルゼミ、エゾハルゼミの最盛期は6月上、中旬と思われる。ハルゼミは関東地方と比べると3週間以上も遅く、エゾハルゼミは那須高原などと同じ、逆にニイニイゼミは1週間から10日ほど早いことになる。なお、2007年6月23日と比べるとハルゼミもエゾハルゼミも少なく感じたので、今年は低調だったのかもしれない。


4、セミの幼虫飼育妨害犯と遭遇しかける

 7月30日、この日は会社の業績不振の生産調整で休みだった。昼間は上野駅周辺で、ミンミンゼミ、ニイニイゼミの声を聞いた後、秋葉原で中古デジカメを買って、夕方には自宅で、自転車のタイヤのバルブを交換をしていた。その時人の気配して、「なんでいるんだよ」みたいな声がした。はじめは隣に誰か来たのかと思い、気にもしなかった。まもなく作業が終わったので、家に入ろうと玄関に向かっていた時、何か白いものが動くのが見えたが、この時も何か飛んできたのかと思い気にせず、家の中に入った。しばらくして裏庭に行こうとすると、玄関近くのミョウガの植え込みが倒され、ちょうど人一人分が入れるくらいの空間ができているのに気づいた。ようするに誰かがやって来て、筆者と会いそうになったので、物陰に隠れやり過ごしたということらしい。筆者と会って都合の悪い人物といえば、幼虫飼育の妨害犯くらいしか思い当たらない。このことから、幼虫飼育妨害犯は顔見知りと考えられる。セミ関係で顔見知りになるのはセミの会談話会ぐらいだから、妨害犯は過去の談話会出席者の中にいる。そして、おそらく、犯人は関東地方には住んでいない。東京に用事があるとき、例えば学会などで来たついでに殺虫剤をかけていったと思われる。それにしても悪運の強い犯人である。家に中に入らず、裏庭へまわっていたら、犯人と出くわし、幼虫飼育妨害事件は解決したはずである。いつの日か犯人を崖っぷちに呼び出して、きめ台詞のひとつでも言ってみたいと思うこのごろである。


5、自宅付近のセミ

 自宅付近のセミの初聞きは、ニイニイゼミ、ヒグラシが7月13日(つくば市高崎では7月3日にニイニイゼミ鳴く)ニイニイゼミは1週間ほどで消えたが、珍しく一時期4個体の合唱になった。アブラゼミが7月22日(つくば市高崎自然の森では18日)、ミンミンゼミは7月26日(守谷で18日)、クマゼミは、勤め先付近で7月27日、自宅付近では8月5日と14日に聞いている。ツクツクボウシは8月13日だった。終聞きはニイニイゼミが自宅付近では7月26日以降聞いていないが、つくば市高崎自然の森ではなんと10月4日に鳴いていた。ヒグラシは8月28日(高崎自然の森では9月23日)、アブラゼミ10月4日(高崎自然の森付近では10月18日)、ミンミンゼミ9月13日(つくば市茎崎町では9月23日)、クマゼミは勤め先付近で8月28日、ツクツクボウシ9月22日(高崎自然の森では10月18日)。
 自宅の庭で見つかったセミの脱皮殻はアブラゼミ23個(12雄、11雌)、ミンミンゼミ8個(4雄、4雌)、ツクツクボウシ3個(2雄、1雌)、ニイニイゼミ1個となっている。アブラゼミはいつもよりやや多く羽化しているが、ミンミンゼミは8月12日に5個体程度鳴いていたのが最高だったので、昨年より低調だった。また、対馬産のミンミンゼミやスジアカクマゼミは羽化しなかった。
 飼育で羽化したセミはシロヤマブキから6月30日にニイニイゼミ1雌(幼虫期間5年、奄美大島産)と7月10日にクロイワニイニイ1雄(幼虫期間不明、奄美大島産)が羽化したのみ。


6、自宅付近以外のセミ

 8月9日城ヶ島、京浜急行の三崎口駅付近でクマゼミの単独の声を聞いたが、昨年クマゼミの合唱が聞こえていた油壺入り口付近は静かだった。複数のクマゼミの声が聞こえてきたのは三崎港を過ぎてからで以前の状態に戻ってしまった。城ヶ島も昨年はクマゼミが多くビデオ撮影も楽だったが、今年はなかなか低いところに来ない。また、クマゼミの合唱でかき消されていたミンミンゼミの声も、今年はよく聞こえていた。
 8月12日平和島公園とその周辺、アブラゼミがいつもよりやや少なく感じ、アキニレで休むクマゼミの雌を見つけた。平和島公園や隣の平和の森公園ではミンミンゼミは少ないのだが、多少起伏のある都堀公園では多く、その中に”アカミンミン”と呼べそうな個体1雄、1雌をみつけた。

クマゼミの雌
アキニレで休むクマゼミの雌(平和島公園)
アカミンミン?(都堀公園)
アカミンミン?(都堀公園)

 8月15日那須高原、大丸温泉より上の方でわずかにコエゾゼミの声がしていただけて、大丸温泉から八幡の間はセミの声皆無だった。
 8月19、20日金沢、アブラゼミがいつもよりやや少ない、スジアカクマゼミは普通に鳴いていた。ともに新鮮な個体が多いので発生が遅れていたのかもしれない。久しぶりに湊一丁目まで行ってみたところ新たにスジアカクマゼミの小集団ができていた。また、20日の朝、北部公園と競馬場の中間地点でクマゼミの声を聞いた。
 9月26、27日奄美大島、 昨年多かったクロイワツクツクは今年は多くない。赤尾木の民宿に泊まっていたのだが、山の続きみたいな感じで木が多いにもかかわらず、セミは少なく、クロイワツクツク少々、リュウキュウアブラゼミが3個体鳴いていただけ、オオシマゼミは山の方で散発的に鳴いていた。暗くなってから小さな川の近くいるはずのリュウキュウマツムシの声を聞いたのが意外だった。

赤尾木の民宿
赤尾木の民宿

 オオシマゼミの多い一屯では昨夜羽化したばかりのような雄がいたので、最盛期まではもう少しかかりそうな感じだった。
 タクシーの運転手が一番行きたくないと言っていた長雲峠にある奄美自然観察の森、その管理人のブログ「長雲峠の四季」(どうやらその管理人とけんかしたらしい)によれば、羽化したてのオオシマゼミが登場するのは9月5日、オオシマゼミの雌が出てくるのは9月19日で、リュウキュウアブラゼミは夏のセミということになっている。オオシマゼミもリュウキュウアブラゼミも山の方が出現が早いようだ。残念ながら奄美自然観察の森は採集禁止である。
 奄美大島から帰ってからぐずついた天気が続いた。その中、リュウキュウアブラゼミ(1雄のみ採集)だけは普通に鳴いており、18度で小雨が降っていても鳴いていた日があった。肌寒い日にリュウキュウアブラゼミの声を聞くと妙な感じがする。なお、オオシマゼミは20度ないと鳴かない。



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