ハルゼミの調査は、いつも行っている伊良湖岬の松枯れがひどくなってきたこともあり、同じところばかりでは面白くないと思い、長野なら6月でもハルゼミが多いらしいので、6月23日別所温泉へ行ってみた。別にどこでもよかったのだが、交通の便がよさそうだったので、別所温泉になった。長野新幹線で上野から上田まで一時間半、さらに上田交通別所線で30分。地方の私鉄はどこも経営が大変らしく、「未来へ残そう別所線」の看板がある。金沢の北陸鉄道よりは乗客の数が多いと思う。
駅舎の外へ出ると周辺の丘からハルゼミの声が聞こえてきた。駅から700メートルほどの別所神社(常楽寺の隣)へ行ってみた。社殿の向かい側にアカマツ林があり、奥のほうはトウヒ林になっている。多少松枯れしたようなところも見受けられるが、関東地方ほどひどくはないようだ。ハルゼミはシーズンも終わりなので、それほど多くないがそれなりに合唱が聞こえる。トウヒ林の方がやや多かったが、木が高いので、姿は見えない。 この後、安楽寺を経て、2キロほどはなれた森林公園へ向かった。 緩やかな上り坂が続く。途中、牛久あたりでは見られなくなったナキイナゴが鳴いてた。蝶類も多く、自然は豊かである。この一帯はアカマツよりトウヒの方が多いので、ハルゼミもトウヒ林で多く鳴いている。森林公園に近づくと、エゾハルゼミの声が混じるようになり、谷沿いの落葉樹でエゾハルゼミが、周辺の針葉樹でハルゼミが鳴く状態になる。ただ、同時に鳴きたてるという感じではなく、ハルゼミの声が多くなったり、エゾハルゼミの声が多くなったりしている。いずれも木が高いので、観察には不向きで、もっぱら声を聞くのみであった。関東地方ではハルゼミとエゾハルゼミの混生地は珍しいが、長野ではそうではないらしい。
別所神社 |
トウヒ林 |
安楽寺 |
森林公園付近 |
8月25日、再び別所温泉をおとずれた。周辺の丘から聞こえてくる声はエゾゼミの太い連続音へと変わっていた。駅の周辺ではミンミンゼミが少数鳴く程度。別所神社ではミンミンゼミが普通に見られ、アカマツからはエゾゼミの声が響びき。日あたりのよい場所でチッチゼミの声がしていた。チッチゼミは松林の中では声がしていない。とまる位置はエゾゼミほど高くはないが、ミンミンゼミとエゾゼミがうるさく、位置が特定できない。ここのミンミンゼミは以前望月で見たミンミンゼミに似ており、一ヶ所で長く鳴く傾向がある。もちろん一度鳴いて飛んでいってしまうこともあるが、高潮音を出しているときも歩き回り、つなぎ鳴きになったり、本鳴きになったりしている。今度は1.5キロほど離れた別所公園へ行ってみた。池の対岸の針葉樹の森からエゾゼミの合唱が聞こえる。あとはアブラゼミ、ミンミンゼミがやや少なめ、ニイニイゼミとヒグラシの声が1個体づつで、チッチゼミも少ない。公園の近くに桜が多く植えられているところがあり、ミンミンゼミがやや多かった。水田の周辺では、オナガササキリが多く、キリギリスも鳴く。すでにススキの穂が出て、コスモスの花が咲き、初秋のたたずまい。水田のあぜ道などは景観が悪くなるためか、除草剤は使われていないらしく、美しい田園風景が広がり、昆虫類も多い。
帰りに上田の駅から歩いて10分ほど上田城公園によってみた。東京の公園のようにミンミンゼミとアブラゼミの合唱がしている。個体数は普通の見られる程度で手で簡単に採れるほどはいない。ツクツクボウシはまったく見られず、かわってチッチゼミがヒマラヤスギなどの大木で鳴いていた。
別所公園 |
別所温泉田園風景 |
気温が低くなるとチッチゼミが低いところにいるという話があるので、気温の下がるのを待っていたら、10月6日になってしまい、別所神社はセミの声がなく、別の松林と杉林でわずかにチッチゼミの声を聞いただけだった。
8月11日、那須高原、”おだん”から八幡へ通じるつり橋ができてからしばらくたつが、ようやく、”おだん”側に環境にはよくないが、駐車場ができ、道もでき、やっとまともにつり橋を利用できるようになった。それまでは八幡から橋を渡り、戻るしかなかった。そこで6月に来たときに”おだん”から渡ろうとしたが、強風で怖くて渡れず、今回もそれを思い出して、情けないがつり橋を横目で見ながら遠回りして八幡へ行った。久しぶりにエゾゼミ類多発生。しかし、新鮮な個体はおらず、早くも発生期終盤の様子。那須高原も暑く、そのせいか、いつもなら落ちてきたりするエゾゼミがアブラゼミのように逃げ回っていた。
8月13日、金沢、運動公園前でタクシーを降りると、スジアカクマゼミがあまり鳴いていない。昨年と比べると少なく、2オスを採集したのみで、メスも見かけなかったので、卵を探すために、9月1日に再びたずねた。曇っていたが晴天時と同じように鳴き声は聞こえていた。産卵痕のついた枝は1本しか見つからなかったので、今年は発生数が少なかったと思われる。2002年の乱獲の影響が出た可能性もある。7月27日にアロエからスジアカクマゼミのメスが予想通り幼虫期間3年で羽化しているが、幼虫期間4年の方が多いのかもしれない。
8月15日、筑波山、アカエゾゼミのビデオ撮影に挑戦というわけで、20倍ズームのソニーHDR-FX7を導入。男体山を少し登ったところ、近くでアカエゾゼミの声が聞こえてきた。単眼鏡で探してみると、逆光気味ではっきりしないが枯葉のようなセミのようなものが見えたので、ビデオカメラでものぞくが、液晶モニターに直射日光が当たり、なんだかわからなかったので、一応少し録画しておいたものが下の写真。ビデオ編集のときに映っているのに気づいた。その後、山頂付近でエゾゼミ類が飛来するのを待つが、都合のよい場所には飛んでこなかった。コンパクトデジタルカメラで、昆虫を撮影していた親子連れが現れ、アカエゾゼミと思しき写真を見せてくれた。山頂も暑く、エゾゼミも活発に活動していた。帰りに山麓でミカドミンミンのメスを撮影。採集しようとしたが、逃げられてしまった。ミンミンゼミはあまり多くなかった。
アカエゾゼミ ソニーHDR-FX7 35ミリ換算784ミリ、距離7〜8メートル |
ミカドミンミンのメス |
8月19日、東京、代々木公園、午前11時頃だったので、クマゼミは1個体ぐらいしか鳴いていない。手でたたく太鼓など楽器を鳴らす人がいてそちらの方がにぎやかだった。次に飯田橋へ、線路沿いの斜面をセミが発生しにくくなりそうなコンクリートの枠に土嚢のようなものを詰め込む工事をしており、そのせいかセミが少なかった。次は沖縄のさんしんの音色の流れる飯田橋を後に平和島公園へ、午後2時頃だったのでやはり、クマゼミは1個体ぐらいしか鳴いていない。アブラゼミが多く、ミンミンゼミも目に付くが、まだメスが少なかった。アブラゼミはユリノキの幹に産卵している個体もいたので、ミンミンゼミの発生だけが遅れ気味だったのかもしれない。このおよそ一月後の9月16日昼ごろ、お茶の水付近を歩いていたが、アブラゼミしか鳴いていなかった。
自宅付近のセミの初聞きは、ヒグラシが7月8日、ニイニイゼミが7月18日、アブラゼミが7月22日、ミンミンゼミが7月28日、ツクツクボウシが8月9日、なお、つくば市高崎自然の森では7月8日にニイニイゼミの複数の声を確認している。8月6日には毎年クマゼミの声が聞こえる場所から今年も鳴き声が聞こえてきたが数は少なめだった。終聞きはミンミンゼミが9月10日、アブラゼミが9月16日、ツクツクボウシが9月24日、飼育以外では9月28日に帰宅途中で聞いたアブラゼミが最後のセミの声となった。
自宅の庭で見つかった脱皮殻は、アブラゼミ11個(オス5、メス6)、ミンミンゼミ6個(3オス、3メス)、ツクツクボウシ2個(オス2)ミンミンゼミの脱皮殻は少ないが、鳴いていた成虫の数は比較的多く、最盛期には10固体近い数の声が聞こえていた。
セミの種類 | 羽化日 | 羽化数 | 幼虫期間 | 備考 |
ニイニイゼミ | 7月7日 7月9日 7月12日 7月14日 7月--日 7月25日 |
1雄 1雄 1雄 1雄 1雌 1雌 |
3年 4年 3年 4年 4年 3年 |
ユッカより羽化 ユッカより羽化 ユッカより羽化死骸で見つかる |
スジアカクマゼミ | 7月27日 | 1雌 | 3年 | |
クロイワツクツク | 8月14日 8月16日 8月20日 8月21日 8月30日 9月 5日 9月25日 |
1雄 1雄 1雌 1雌 1雄 1雌 1雌 |
2年 2年 3年 2年 3年 3年 2年 |
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オオシマゼミ | 9月 7日 | 1雄 | 2年 | 奄美大島産 |
アロエから羽化したセミは表のとおり。今年も殺虫剤をかけられるという嫌がらせが続いており、7月中旬、羽化してくると思われるのアロエの容器には網をかぶせてあるのだが、それを中心に殺虫剤をかけられたらしく、大型のセミの羽化はスジアカクマゼミ1メスのみとなってしまった。その脱皮殻をよく見える位置にしておいたところ、9月9日の夕方帰宅するとなくなっており、最初は持っていかれたと思ったのだがよく探すと見つかり、容器の向きが変わっていたためと判明。誰かがやってきて、隣の容器に殺虫剤をかけるときに邪魔だったので、どかして元に戻すとき、縦だった容器を横にしてしまったらしい。犯行時間は午後4時から6時までの間と思われる。今まで犯行は平日のことが多かったが、土曜は秋祭りにでも行っていたのか日曜になったようで、殺虫剤も匂いの薄いのに変えたようである。殺虫剤をかけられた容器をあけてみたが、ほぼ全滅した。
9月17日、庭のセミがいなくなり、鳴いているのは飼育していたクロイワツクツクとオオシマゼミだけになっていた。オオシマゼミの飼育装置のあるミズキを見ると飼育装置の上の部分にツクツクボウシのメスが1個体とまっていた。一度は逃げたが、オオシマゼミが鳴きだすと再び飛来し、飼育装置の網の上を歩き回り、誘われて飛んできたような行動を見せたので、捕獲し飼育装置へ入れた。さすがに交尾まではしなかったので、ツクツクボウシのオスを採集してきて、入れたところまもなく交尾が成立した。飛来したツクツクボウシのメスは交尾のためにやってきたのは確かである。人が聞いてずいぶんと異なるオオシマゼミとツクツクボウシの声をツクツクボウシは識別できないらしい。