蝉雑記帳2005




1、松枯れが目立ってきた伊良湖岬

 5月13日の夜行バスで伊良湖岬へ、14日は寒気の影響で気温が低く曇り。 ハルゼミは鳴きそうもないので、ひさしぶりに灯台付近を散策。新しい灯台が建設中。 しばらく鳴りを潜めていた松枯れが目立ってきたことが気になる。 ハルゼミが鳴かないので、泊まる予定ではなかったが、休暇村に一泊することにした。 ハルゼミは午前11時過ぎから鳴き出し、昼過ぎからは盛んに鳴くようになった。 翌日は午前6時半頃から合唱が聞かれた。アメダスの気象データを見るとハルゼミは 気温が16度以上で日照があれば鳴くようだ。 休暇村の周辺でも松枯れが見られるようになってきて、松が枯れたあとにニセアカシアが入り始めている。


2、石廊崎

 7月17日、本当は石垣島にいるはずが、台風のおかげで石廊崎一泊になった。 2年ぶりに城跡へ上ってみると、ここしばらく手入れがされていないらしく、荒れ放題で、 昨年の台風で倒れたらしいサクラの木がそのままになっていた。しかし、ヒメハルゼミは以前より増えたように思えた。 石廊崎灯台の近くにあった熱帯植物園や売店などが軒並み閉園、閉館になっており、なんだか急に寂れてきたようだ。 夜、泊まったペンションではヒメハルゼミのいる山の方を向いた部屋にはヒメハルゼミが 飛んできてるようだったが、筆者の泊まった部屋はあいにく山の方を向いていなかったので、 飛んでこなかった。早朝、4時半頃からニイニイゼミ、ヒメハルゼミが鳴きだし、 6時半を過ぎる頃からヒメハルゼミの合唱が聞こえるようになった。

城跡
荒れはてた城跡

3、城ヶ島

 7月30日、クマゼミの羽化のビデオ撮影のため城ヶ島に一泊。セミの発生が遅れているらしく、 脱皮殻も少なく、ミンミンゼミはろくに鳴いていない。羽化が見られそうな畑の周辺は外灯もないので、 明るいうちからうろついていると、まだ、午後7時前だというのにクマゼミの羽化が始まっており、 なかにはすでに逆さまになっているものもあった。ミンミンゼミも午後8時前にはほとんど羽化が終わっていた。 道路際外灯近くのクマゼミはやや遅かったが、自宅の庭のセミと比べると1時間以上も早い。  翌朝、4時半ごろからニイニイゼミが鳴きだし、5時前にミンミンゼミが鳴き、5時半頃からクマゼミが鳴きだした、

クマゼミの羽化
クマゼミの羽化

4、木材団地

 8月5日の夜行バスで、金沢市へ。昨年、発生地よりはなれた北部公園でスジアカクマゼミの声を聞いたので、 スジアカクマゼミは飛び火分布をする傾向があるのではないかと思い地図を見ると、発生地の北西方向に木材団地と 称される一帯があることに気づいた。木材団地と聞けばなにやらスジアカクマゼミの発生にかかわっているような気がしたので、 北陸鉄道浅野川線に乗り、粟ヶ崎で降りた。浅野川線はレールバスで降りるときは一番前のとびらからしか降りられない。 粟ヶ崎駅付近の公園や運動公園ではスジアカクマゼミの声は無く、さらに湊地区にある第一貯木場を目指して進んでいくと、 スジアカクマゼミの声が聞こえてきた。大きな駐車場の脇の区画整理から免れたようなシダレ柳11本と落葉樹と 車の出入り口をはさんで、クロマツと針葉樹からなる並木みたいな小さな林で、10雄程度の小集団。8月20日もう一度来て調べてみた ところ、この場所から数百メートルほど離れた、まだ新しい小さな公園でも1雄、さらに近くの木材協同組合の敷地内でも 2雄のスジアカクマゼミの声を聞いた。

湊一丁目の発生地
湊一丁目の発生地

 おそらく最初にスジアカクマゼミの発生が始まったのは第一貯木場付近だったのではないのかと思う。やがて競馬場ができ、 木が植えられ、スジアカクマゼミが飛来し発生するようになったのだろう。そして、最初の発生地は区画整理や開発でほとんどが失われ、 今では痕跡をとどめるに過ぎない。しかし、輸入された木材等にスジアカクマゼミの卵が生みつけられていた可能性は低い、 なぜならば、スジアカクマゼミは生枝産卵だからだ。8月20日、21日に産卵痕を探したが、ほとんどが生枝だった。 枯れていたのはシダレ柳の枝の細い部分だけで、それも最近枯れたばかりのようだった。
 スジアカクマゼミがチッチゼミなどほかの生枝産卵種と異なる点は産卵された枝が徐々に枯れてゆくことで、 秋にはほとんどが枯れ枝になってしまう。このため最初の調査のときスジアカクマゼミは枯れ枝産卵ということになったのだと思う。
 いずれにせよ第一貯木場付近の団体だか企業だかがスジアカクマゼミの発生にかかわっている可能性はあると思う。 最初の調査のとき湊地区の調査をしていればスジアカクマゼミを発見することができ、スジアカクマゼミの進入経路をある程度把握する ことができたのではないかと思う。


5、白浜のクロイワツクツク

 今年はアロエからクロイワツクツクが羽化してこなかったので、クロイワツクツクを確保しようと9月10日千葉県白浜へ行った。 いつも採集している住宅地の入り口付近はほとんど鳴いていなかった。小さな水田をはさんだ反対側の屋敷では鳴いていたので 採集させてもらおうといってみると、雑草が伸び放題になっていて人が住んでいる気配が無かったので、不法侵入。
 近所の人の話では夕方うるさいほど鳴いていると言うことだったが、数もあまり多くなく、新鮮な個体はほとんど見なかったので、 そろそろ終盤らしい。白浜も行くようになって10年、クロイワツクツクの鳴き声の聞こえる範囲はほとんど変わっていないように思えるし 個体数もあまり変わらないように思う。ただ最盛期が早くなってきているようで、そのせいかここ数年ツクツクボウシの声を聞かない。


6、9月下旬の石垣島

 9月23日から25日まで7月に行きそびれた石垣島へ。夕方近くバンナ岳に、タクシーで行って帰りは歩き。イワサキゼミはあまり鳴いていない。バンナの入り口には「昆虫を大切しましょう」 の看板があるが昆虫そのものが少ない。おまけに山頂付近の展望台が新しく造りなおしていて工事中。タイワンヒグラシの鳴いている姿を見ることができたものの 工事関係の車が多くあまり良い環境ではない。

タイワンヒグラシ
タイワンヒグラシ

 24日は、以前イワサキゼミが多かった小浜島へ渡り、貸し自転車で島を回ってみた。牧場にはさまれた「ちゅらさん展望台」なるものができていたり、大岳(うふだき)の登り口のトイレが新しくなっていた。 イワサキゼミはある程度まとまって木が生えていれば、鳴き声を聞くことができる。大岳付近が最も多く鳴き声を聞いたものの、前回ほどは個体数が多くなく、比較的木の上のほうで鳴き、 さらに変に敏感で観察にはやや不向きだった。昼過ぎに陽がかげると急にイワサキゼミのほとんどが沈黙してしまった。

ちゅらさん展望台から見た大岳
ちゅらさん展望台から見た大岳(うふだき)

 午後3時頃には石垣に戻り、またタクシーでバンナの入り口まで行き、バンナとは反対の道を行ったところにあったカンヒザクラの公園でイワサキゼミを観察した。 小浜島よりは低いところによまっている個体がいた。次の日もこの公園でイワサキゼミ観察採集。朝のうちは夕方より木の上のほうでなく個体が多い。それに一回の鳴く長さが 長い。相変わらず敏感なのが多いが1雄を手で採集、さらに低いところにとまる1雌も採集。天気が晴れから曇りになり、時々陽が差す程度になったが、先日の小浜島ほどは沈黙しなかった。 帰りはタクシーにむかえに来てもらうつもりだったが、「わからん」と言われたので早めに切り上げ、 1時間20分歩いてバスターミナルまで戻り、バスで空港へ向かった。まったく最近、話しにならない人が増えたものだ。それと自動販売機の近くに空き缶入れが無い。何とかしろよと言いたい。


7、自宅付近のセミ

 ニイニイゼミの声をはじめて聞いたのは意外にも勤め先で、6月28日。7月に入ると聞かなくなり、それっきり聞かなかった。 自宅付近では7月21日にアブラゼミと一緒に鳴きだした。7月22日には勤め先付近で牛久のくまぜみマニアによると思われるクマゼミが鳴きだした。 昨年くまぜみマニア氏がクマゼミを放していたケヤキの木がまたしても切られてしまい、クマゼミの放す場所が最初の場所に戻ったようで、 勤め先に飛来するクマゼミも減って、最高2雄。8月18日まで聞こえていた。7月25日、自宅付近でヒグラシ。ニイニイゼミは2雄鳴いており、 裏庭で鳴いていたのはクロイワニイニイのようだったが、周波数を調べようと思っているうちにいなくなってしまった。7月31日自宅の庭でクマゼミ、 8月8日まで確認、一時いなくなって8月15日に再び鳴くようになり、17日まで鳴いていた。8月4日ようやく庭でミンミンゼミが鳴き、 8月15日にツクツクボウシが鳴くのを聞いている。自宅付近のニイニイゼミとヒグラシの聞きおさめは8月30日、ミンミンゼミが9月11日。 夏のように暑かった10月2日にシャトーカミヤの裏でツクツクボウシ2〜3とクロイワツクツク1雄の鳴き声、 10月8日に勤め先でアブラゼミ、10月23日にシャトーカミヤの裏でクロイワツクツク1雄の鳴き声を聞いたのが最後だった。
 庭で見つかった脱皮殻はミンミンゼミ13個(5雄、8雌)、アブラゼミ11個(7雄、4雌)、ツクツクボウシ1個(雌)でミンミンゼミ、アブラゼミは昨年より多く、 ミンミンゼミは8月の中旬に5雄程度鳴き、久しぶりににぎやかだった。ツクツクボウシは9月11日に3〜4雄鳴いていた。
 飼育で羽化してセミは7月10日ユッカからニイニイゼミ1雄幼虫期間3年、7月18日に同じくユッカからニイニイゼミ1雄幼虫期間5年、 8月6日にユッカからツクツクボウシ1雄幼虫期間2年、10月19日にアロエからオオシマゼミ1雌、幼虫期間4年、奄美大島産の4個体。 オオシマゼミを優先に飼育したことが裏目に出たのかアロエからほとんど羽化してこなかった。

戻る