蝉雑記帳2000



イワサキクサゼミ
イワサキクサゼミ

1、15年後のイワサキクサゼミ

2000年5月3〜4日、いつもは素通りばかりしている沖縄本島にいた。 4日は15年ぶりにイワサキクサゼミを見にタクシーで知念まで行ってみた。 佐敷町あたりでその声を聞いたような気がしたくらいで、タクシーの中からは ほとんどイワサキクサゼミの声が聞こえない。斎場御嶽(せいふぁうたき)で タクシーを降りる。斎場御嶽は公園化が進んでいて、整備されすぎて昆虫採集 には不向きになりつつある。イワサキクサゼミは周辺のススキ主体の荒地で、 少し鳴いている程度、斎場御嶽から知念海洋レジャーセンター付近もサトウキ ビ畑が減少、荒地が増え、15年前はむやみやたらいたイワサキクサゼミは、 今では絶滅でもしそうなくらいに、まばらに鳴いているだけ。とまっている植 物もサトウキビよりも、ススキに多く、潅木やセンダングサ、普通の木にも見 られた。今年は発生が遅れているようだが、時の流れを感じずにはいられない。 (地元の研究者のI氏によれば、今年は発生が遅れており、確かにサトウキビ 畑やススキの草原が少なくなり、個体数は減ったが、それほど危機的状況では ないそうである。)その後、午後の便で石垣島へ向かった。

草にとまるイワサキクサゼミ
草にとまるイワサキクサゼミ 
沖縄、知念
木にとまるイワサキクサゼミ

 石垣島では、宿泊先の川平へ向かう途中あちらこちらで、イワサキクサゼミの声を 聞くことができた。5月6日の昼まで川平周辺にとどまって、イワサキクサゼミを観 察した。とまっている植物は、やはり、サトウキビには少なく、ススキが一番多い。 また、芭蕉や潅木、センダンなど木の上の方から声が聞こえてくることがあった。い ずれも日当たりの良い環境で、鳴いている時間は午前8時頃から午後5時過ぎまでで、 日が陰ると鳴かなくなる。個体数は沖縄の知念よりは多いが、以前のようにむやみや たら多い場所には出くわさなかった。6日の午前9時少し前に交尾が成立するのを一 度見たが、発生が遅れているらしく、スゥーピングでえられたのは、ほとんど雄ばか りだった。


2、 飯給、里見、月崎そして石廊崎

 7月15日はヒメハルゼミの観察地をさがして、千葉県市原市の五井から小湊鉄道に乗る。昨 年は里見だったので今年は飯給(いたぶ)まで行ってみた。ひなびた無人駅に降りると水田の向 こう側に白山神社がある。この神社はほとんどが杉林だが、入り口付近に大きな樫?の木があり、 その周辺でヒメハルゼミの合唱が聞こえた。木が高くどうしょうもないので、別の所をさがして うろついてみたが、ヒメハルゼミはあまり多くなく、観察に適した場所は見つかりそうもないの で、歩いて里見駅まで戻ることにした。里見駅周辺は数は少ないが、割とヒメハルゼミの声を聞 くことができる。駅の近くの大山祇神社、西光寺の少し手前の森、加茂中学校の裏、熊野神社の 周辺。熊野神社もほとんどが杉林で周辺の人家付近に樫?の大木があり、そこで鳴いている。加 茂中学校の裏がもっとも多いが、そこにいたる道を見つけられなかったので、くわしくはわから ない。全般に昨年7月25日と比べるとやや少ないように思えた。
 7月20日には伊豆半島南端石廊崎へ行った。港の近くでヒメハルゼミを探したが、おもに林 の奥の方で鳴いていて、なかなか道の近くには出てこない。1雌を採集したが、どういうわけか 前日に羽化したような未熟な個体で雄も採集できなかったので、逃がし、結局収穫なし。
 7月23日は再び小湊鉄道、今度は飯給の先、月崎まで。駅の近くの杉を主体にした林で少数 のヒメハルゼミの声を聞いただけで、市民の森の入り口まで行ってみたが、それ以外ヒメハルゼ ミの声は聞けなかった。再び電車で里見駅まで戻り、近くの杉林でヒグラシを採集して退散した。 ヒメハルゼミは7月15日より減っていた。ヒグラシも日中から鳴くこともなく、ニイニイゼミ も少ないようだったが、遅れているのか不作なのかさだかではない。

小湊鉄道 里見駅
小湊鉄道 里見駅




3、 クマゼミ

 クマゼミの声を今年初めて聞いたのは7月20日に伊豆へ行ったときで、湯河原、網代、今井 浜海岸駅で電車の停車中に聞いている。
 7月28日、茨城県牛久の勤め先から北へおよそ300メートルほど行ったところにある大き なケヤキの木のあたりで鳴いているクマゼミの声を確認。障害物がほとんどないので勤め先から クマゼミの声を確認できる。昨年も何度かクマゼミの声を聞いている所だ。どうやら今年も”く まぜみマニア”がクマゼミを放したらしい。7月31日朝には勤め先の敷地内でクマゼミ1雄が 鳴き移りをしながら鳴いていた。その後も勤め先周辺でクマゼミを声を毎日聞いている。そこで、 8月6日に詳しく調べてみると、例のケヤキの大木は自宅より直線で、2キロほど国道6号と4 08号交わる地点付近にあり、クマゼミはそのケヤキとそれから少しはなれた中程度のケヤキ、 さらに国道6号を渡ったケヤキの木を中心にその周辺に散らばっているのも含めると20〜30 はいるだろうと思われた。さしずめ,ちょっとしたクマゼミの発生地がそのまま移動してきたよう である。この地区のクマゼミは少なくとも8月16日まで確認している。牛久でのクマゼミの終 聞きは8月26日自宅の庭である。
 8月12日には東京代々木公園へクマゼミの声を聞きにいった。時間は9時半頃,まだニイニイ ゼミの声が多く聞こえ、ミンミンゼミがやや少ない。クマゼミは西門付近を中心に20くらいの雄 の声がしていた。かなり広範囲に散らばっているので,クマゼミ特有の騒々しさは感じられない。 10時過ぎ原宿駅の付近で1雄が鳴き移りをしながら鳴いていたのが珍しいと思った。
 8月19日、秋葉原に来たついでに、御茶ノ水の湯島聖堂へよってみた。ミンミンゼミはだいぶ 少なくなっていて、ツクツクボウシの声が目立つ中、ニイニイゼミとクマゼミがそれぞれ1雄の声 がしていた。


4、15年後のヤエヤマクマゼミ

 8月13日〜15日にかけて、石垣島を訪ねた。13日午後港近くのホテルから歩いてバンナ岳 へ、バンナスカイライン入り口付近のリュウキュウ松の林で、ヤエヤマニイニイの声が複数してお り、初夏からのセミの発生の遅れがまだ続いているようだった。午後4時過ぎに山頂付近に着くと、 ヤエヤマクマゼミ1雄が鳴いていた。午後5時過ぎからタイワンヒグラシの声が聞こえだし、6時 半頃まで聞こえていた。はじめは同じような所で鳴いていたタイワンヒグラシは6時を過ぎる頃か ら頻繁に鳴き移りをするようになった。市内まで歩いて戻ってきたが、道に迷って結局タクシーで ホテルへ戻った。
 14日、朝7時頃ホテル近くで、わずかにクマゼミの声がしていた。バンナ岳にはあまりセミが いそうもないので、西表島へ渡った。午前10時前には船浦へ着いた。港の近くではクマゼミが合 唱していた。石垣島ではほとんど終わりのクマゼミが船浦では、まだ、あちこちで鳴いていた。産 卵痕を探したが、古いものしか見つからなかったので、まだ、産卵期にはいたっていないようだっ た。港付近でクマゼミ1雄をとらえて見ると新鮮な個体だった。本鳴きくずれのような悲鳴で本土 のものと異なるように思えた。生かして持ち帰れそうもないので逃がしたが、これが今回採集した 唯一のセミとなった。昼近いせいか、鳴き移りする個体はなく、一ヶ所で何度も高潮音、間奏音を 繰り返していた。また、間欠的に合唱する傾向があるように思えた。個体数はそれほど多くはなか った。このほか聞いたセミはヤエヤマクマゼミ1雄の声、ヤエヤマニイニイ、イワサキクサゼミと もに少数の声。あまり暑いので昼過ぎの便で石垣島へ戻り、夕方、バンナ岳でタイワンヒグラシの ビデオ撮影をした。
 15日はバンナ岳でヤエヤマクマゼミを追う。午前8時を過ぎてからようやく合唱が始まった。 以前はヤエヤマクマゼミが好むカラズザンショウが道沿いに見られたが、今はほとんど見られない。 なかなか道の近くで鳴いてくれない。結局ビデオ撮影をしただけで、何も採れず。セミが遠くなっ たとつくづく思った。

西表島のクマゼミ
西表島のクマゼミ

タイワンヒグラシ
タイワンヒグラシ 石垣島

ヤエヤマクマゼミ
ヤエヤマクマゼミ 石垣島



5、オナガ退散

 茨城県牛久市の自宅周辺のセミの初聞きは7月10日にヒグラシ、7月19日ニイニイゼミ、7 月23日アブラゼミ、7月31日ミンミンゼミ、8月19日ツクツクボウシ。
 ミンミンゼミは8月上旬には2〜3雄鳴くようになり、順調に増えるかと思ったところにオナガ が3羽やってきて、庭にいついてしまい、ミンミンゼミは1雄ぐらいにされてしまった。アブラゼ ミは木の低いところなどへ逃げて、ミンミンゼミほどは影響はなかった。あまりオナガがしつこい くいついているので、物を投げたりして追い払った。それが効いたのか、あるいはオナガの気まぐ れか裏隣の叔父の家に移動した。しかし、完全にオナガの影響がなくなったのは8月20日過ぎか らで、その頃からミンミンゼミが再び増え始め、最高はいつもなら終わりかける25日頃の3〜4 雄、終鳴きは自宅の庭にしては遅い9月9日だった。
 自宅の庭で見つかった脱皮殻はニイニイゼミ1個、アブラゼミ22個(14雄、8雌)、ミンミ ンゼミ34個(15雄、19雌)、ツクツクボウシ2個(1雄、1雌)でアブラゼミ、ミンミンゼ ミは羽化数が多いのに鳴いている数はミンミンゼミで特に少なかった。オナガのせいであろう。ツ クツクボウシは羽化数より鳴いている数のほうが多く2〜3雄の声がしていたので、見落としがあ ったと思われる。9月12日に庭より羽化したツクツクボウシ1雌がオオゲジのエサになっていた。

オオゲジにつかまったツクツクボウシ雌
オオゲジにつかまったツクツクボウシ雌


表1 アロエから羽化したセミ 2000年

 
セミの種類 羽化日 羽化数 幼虫期間備考
ニイニイゼミ 6月30日
7月1日
7月2日
7月3日
7月3日
7月4日
7月5日
7月5日
7月6日
7月6日
7月6日
7月7日
7月7日
7月9日
7月10日
7月11日
7月11日
7月14日
7月15日
7月18日
7月19日
7月23日
7月28日
1雄
1雄
1雄
2雄
1雄
3雄
1雄
1雄
1雄1雌
1雄
1雄
1雄
1雄
1雄
  1雌
1雄
  1雌
1雄2雌
  2雌
2雄3雌
  1雌
  1雌
  1雌
3年
4年
3年
4年
3年
3年
4年
4年
3年
4年
3年
4年
3年
4年
3年
3年
4年
3年
3年
3年
4年
3年
4年
奄美大島産

奄美大島産

奄美大島産
奄美大島産

ユッカより羽化
奄美大島産

ユッカより羽化 本土雄×奄美大島雌
ユッカより羽化
奄美大島産
ユッカより羽化
奄美大島産
奄美大島産

奄美大島産
奄美大島産
奄美大島産
ユッカより羽化
奄美大島産
   
ミンミンゼミ 7月19日
8月4日
8月12日
1雄
1雄
  1雌
4年
4年
3年


ミカド型
クマゼミ 7月20日
7月20日
  1雌
  1雌
4年
5年


ツクツクボウシ 8月21日
8月25日
8月25日
8月26日
8月27日
8月29日
8月30日
9月2日
9月2日
9月4日
9月5日
9月6日
9月6日
9月7日
9月8日
9月9日
9月10日
9月11日
9月11日
9月13日
9月17日
9月17日
9月−日


9月29日
2雄
1雄
1雄
1雄
3雄
1雄
4雄
2雄
1雄
1雄
1雄1雌
  3雌
2雄
1雄
1雄
  1雌
  1雌
  1雌
  1雌
  1雌
  1雌
  1雌
  1雌


  1雌
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年


1年


本土雄×屋久島雌


本土雄×屋久島雌
      

本土雄×屋久島雌


本土雄×屋久島雌

本土雄×屋久島雌
ユッカから羽化
本土雄×屋久島雌
本土雄×屋久島雌

本土雄×屋久島雌
本土雄×屋久島雌
本土雄×屋久島雌

(屋久島雄×本土雌)雄×
(屋久島雄×屋久島雄×
(屋久島雄×本土雌))雌

クロイワツクツク 8月6日
8月10日
8月19日
8月21日
8月22日
8月25日
8月26日
8月29日
9月8日
9月12日
9月13日
9月15日
9月17日
9月19日
9月20日
9月23日
9月25日
9月26日
10月1日
10月3日
1雄
1雄
1雄1雌
1雄
  1雌
1雄
1雄
  1雌
1雄
1雄1雌
  1雌
  1雌
1雄
1雄
1雄
1雄
  1雌
  1雌
1雄
  1雌
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
千葉県白浜産
千葉県白浜産 片方の羽が伸びない
千葉県白浜産
千葉県白浜産 口吻障害
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産
千葉県白浜産



6、 木の合わない話

 アロエから羽化したセミは表1で総数97となり、年間羽化数としては過去最高となった。ニイ ニイゼミが23雄13雌このうち奄美大島産が12雄10雌。ニイニイゼミはすべて、表庭のイヌ ザクラで飼育したのだが、奄美大島産は木が完全に合っていなかったようで、半月ほどで死ぬのが 多かった。それ以外のものは3週以上は生きていたが、一月以上生きるものはなかった。なお、奄 美大島産の中から写真のようなクロイワニイニイに似たものが出てきた。また、奄美大島のクロイ ワニイニイのような”ジィー”の部分が強調される鳴き方をしているものがあった。今回羽化した 奄美大島産のニイニイゼミは1993年に奄美大島より採集してきた産卵痕から孵化し、1997 年に幼虫期間4年で羽化したものどうしを掛け合わせた2代目で、なぜか幼虫期間が短縮され3年 で羽化したものである。このニイニイゼミはクロイワニイニイの遺伝子が何割か組み込まれた雑種 なのかもしれない。

クロイワニイニイに似たニイニイゼミ
クロイワニイニイに似たニイニイゼミ奄美大島産

 ツクツクボウシも普通のが19雄4雌と羽化しているが、飼育していたミズキが9月に入り、雨 が数日続いた後、急に木が合わなくなって、3雄を残し死んでしまい、アカメガシワへ移した。採 卵用の雌は野外から採集という間抜けなことになった。その一週間後、今度はクロイワツクツクを 飼育していた裏庭のミズキもおかしくなったが、この木の上の方で、野外のクロイワツクツク1雄 (飼育していたものが逃げたのか、どこかで発生したのか不明。9月14日〜17日まで)が鳴い ていた。クロイワツクツクもアカメガシワへ移したが、未熟な雌が死んだりして完全ではなかった。 また、クロイワツクツクの羽化は8月6日から始まったが、だらだらと続く傾向があり、二つある 容器のうち一つの羽化が一月遅れた。なお、ツクツクボウシ本土雄×屋久島雌の雄の鳴き声は屋久 島雄×本土雌の鳴き声より本土的で、ほとんど本土と変わらないか、多少詰まったように聞こえる 程度だった。羽化数は4雄8雌で普通のツクツクボウシが雄が多く羽化しているのに対して、雌が 多く羽化している。最後の普通のツクツクボウシの雌羽化が9月29日だったので、成熟する前に 雄が死んでいまい、未交尾のままとなった。この雌の飼育装置へオオシマゼミ奄美大島産を入れて おいたところ、オオシマゼミが鳴きだすとツクツクボウシの雌がオオシマゼミの方へ近づいて行っ た。しかし、大きさの違いからか交尾にはいたらなかった。


7、 3度目の久米島

 10月7〜9日、久米島。今回は東海岸のイーフビーチ近くに泊まっていた。とりあえず、レン タサイクルで近くにある銭田森林公園へ行ってみた。ここではクロイワツクツクの声しか聞こえな い。木も比較的高く、今年は発生が遅れているらしく、それほど個体数も多くない。次に昨年オオ シマゼミが多かったアーラ岳東山麓にあたる島尻へ行ってみた。島尻の集落は東側が海に面してい るほかは三方向が山に囲まれている。オオシマゼミが多いのは一番奥まった所で、海岸に近づくに つれ、少なくなり、海岸付近の山や集落内はクロイワツクツクだけになる。オオシマゼミはかなり 多く、楽に採れそうに思えたので、次の日はアーラ岳への林道の入り口付近から林道少しを登った あたりをうろついてすごした。10月1日時点で奄美大島ではクロイワツクツク、オオシマゼミと もに発生がかなり遅れていたが、久米島のオオシマゼミはすでに産卵期をむかえていた。個体数は 多いが、雄は相変わらず、木の上の方にとまり、時おり低いところにくるが、敏感で採集できない。 雌は雄のいないカンヒザクラにいることがあり、気づくのが遅れ逃げられることがあった。ツクツ クボウシやイワサキゼミのように時間をおいて鳴くときや鳴き移りのときに前奏音が長くなるのが 久米島のオオシマゼミの特徴だ。また、今回、沖縄本島の個体のように途中から急にテンポが早く なる鳴き方を何度か聞いた。結局、産卵痕を集めただけで終わってしまった。産卵痕の中にはクマ ゼミとクロイワニイニイ(当然すでに孵化したあと)と思われるものもあった。(後にオオシマゼ ミのものと思われる産卵痕を調べたところ中は空であった。)このあたりは所々に街路樹用の樹木 ?を栽培しているところがあり、草が刈ってあったりして、観察には都合がよい。オオシマゼミが 卵か幼虫の段階でこの樹木といっしょに市街地へ運ばれる可能性があるような気がする。そのせい か9日の朝、ホテルの敷地内で1度オオシマゼミの声を聞いた。
 クロイワツクツクはホテルの周辺にもいるが、まだ、未熟な雄が見られるところから、個体数増 加中らしい。朝、日が差してくると鳴き始め、活発に活動する。9日の朝、8時半頃交尾中のもの を見つけた。午後になるとわりと敏感になる傾向があり、夕方は日が陰ると鳴き止む。早朝やたそ がれ時に鳴くことはなかった。


8、 低温で鳴いたクロイワツクツク

 10月1日に採集した奄美大島産のクロイワツクツクが11月になってもまだ生きており、11 月5日と18日に鳴いていた。5日は午前10時過ぎ、飼育装置に日があたってくると鳴き出し、 この時の日陰の温度は16度だった。昼頃20度近くになった時、同じ日に採集して生きていたオ オシマゼミも鳴き出した。18日は午前9時過ぎに鳴き出し、この時、日があたっていた所の温度 は14度、日陰は11度で室内ではストーブをたいていた。この日は鳴いたのは一度だけで、気温 が上がっても鳴かなかった。以前にも奄美大島産のクロイワツクツクが霜が降りた日の日中、日が あたってきて鳴いたことがある。


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