セミの成虫の寿命が一月の理由

 インターネットを検索していると「セミの成虫の寿命が一週間ではなかった」というような記事が出てきた。 古い記事が出てきたのかと思ったが、2015年の比較的新しい記事だった。ずいぶん前からセミの成虫の期間はおよそ一月という情報が流れていたと思うのだが、最近わかったよう内容になっていて驚いた。
 いまだにセミの成虫期間が一週間だと思っている人は多い。セミは羽化してから成熟するまで真夏の気温の高いときで、雄で5日、雌で6日ほどかかる。雄が本調子になるのは7日目(ニイニイゼミで少し早い)で、雌が飼育で交尾を見かけるのは8日目のことが多い。9月下旬に遅れて羽化したツクツクボウシの雌が交尾が確認できたのが16日後だった。もしセミの成虫の期間が一週間だったら繁殖不可能になってしまう。
 セミは成虫の期間はおよそ一月と短いわりに成熟には時間がかかっている方である。ちなみにコオロギ類は3日もすると変な調子で鳴くようになる。飼育ではスズムシは鳴き始めて一月もすると雄が減ってくる。自然状態では10月下旬まで声を聞くことがあるから成虫の期間は1〜2ヶ月。キリギリス類は成熟に1週間以上かかる。成虫の期間は一月半から2ヶ月以上。セミの成熟するのにかかる時間はコオロギ類とキリギリス類との中間ぐらいである。
 セミの成虫の飼育は難しい、木をセミにあわせるのが難しいのである。アブラゼミ、ミンミンゼミの成虫を飼育するのにミズキやサクラを使うのだが、飼育できるかどうかはやってみないとわからない。羽化直後から飼育して、木が全くあっていない場合は2〜3日で死んでしまう。このことからセミの成虫期間は一週間になってしまったと思われる。多少なりともあっていると成熟するが、2週間程度で急に死んでしまう。この場合雄の発音活動や雌の産卵数も少ない。もう少し木があっていると3週間程度生きる。これくらいあっていると雄の発音活動や雌の産卵数もまずまずの状態になる。よく図鑑などでセミの成虫期間2〜3週間になっていたりするが、このあたりのことを表している。木がセミにほぼ完全にあっている場合セミの成虫期間は4週間以上になり、雄の発音活動も自然状態とそん色のないものとなる。これが理想なのだが、3週間程度で妥協せざるを得ないのが現状である。また、木によっては成熟している個体は問題ないが、未成熟個体は死ぬことがある。さらに雄と雌で飼育結果に差が出ることもあり、セミの成虫の飼育は厄介である。また、セミの成虫が夏の暑さに弱いと書いてある記事もあるが、セミの飼育がうまくいかないのを温度のせいにしたがる人がいるからで、セミの成虫の寿命は木しだいである。

セミの成虫の飼育装置
セミの成虫の飼育装置


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