ミンミンゼミは夏の暑さに弱くない

 ウィキペディアなどによれば、ミンミンゼミは夏の暑さに弱いということになっている。茨城県の牛久あたりでは、40度近い高温にはならないので、ミンミンゼミの高温の限界はわからない、高温に弱ければ、低温でも活動できるはずだ。ハルゼミは16度で日照があれば鳴く、ミンミンゼミが何度あれば鳴くかといえば、およそ20度である。これは、アブラゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシなどと同じである。ニイニイゼミは19度でも鳴く、奄美大島のリュウキュウアブラゼミは18度以下でも鳴く。
 東京の最高気温が35.5度を記録した2015年8月11日の昼過ぎ、平和島公園周辺を歩いていたが、ミンミンゼミは普通に鳴いていた。ようするにミンミンゼミはアブラゼミと同じである。ミンミンゼミが夏の暑さに弱いというような科学的根拠はない。北東風が吹いたらセミは鳴かないのである。ミンミンゼミが夏の暑さに弱かったら、夏が暑くなるようなところには、初めからいないだろうと思う。夏が暑くなるようなところでミンミンゼミが鳴くのは、ミンミンゼミが夏の暑さに強いからである。  セミの多くは一年で最も暑くなる時期に地上に出てきて、日中活動している。そのセミが夏の暑さに弱いわけがない。それはエゾゼミ類も同じである。エゾゼミ類が問題にしているのは夏の暑さではなく、長さである。夏が長くなると幼虫の発育が異常をきたしてしまう。だから、エゾゼミ類は関東地方では秋が早くやってくる山にしかいないのである。
 夏が高温の場所で全体がほぼ緑色のミカド型が多いという話もあるが、夏が暑いとは思えない、山形県飛島などはうまく説明がつかない。
 ミカド型は本来は普通のミンミンゼミになるはずだった個体が、羽の模様までは出てくるが、それ以外の模様が出てこない着色不良を起こした個体である。
 しばしば、前胸背に黒い部分が残っている個体がいるが、それは本来黒い部分が多いミンミンゼミになるはずだった個体がミカド型になったと考えられ、初めから黒い。
 全体に対し何パーセント着色不良を起こす(ミカド型になる)という形で比率が遺伝する。ミカド型どうしを掛け合わせるとミカド型の比率が高くなる。これは実験済みである。しかし、ミカド型どうしを掛け合わせ続けても100パーセントミカド型にはならないと思われる。必ず正常な個体が出てくると思う。また、正常な個体を掛け合わせ続ければ、ミカド型の比率は下がっていくものと思われるが、その場合でもミカド型がゼロになることはないと考えられる。2015年夏自宅の庭で、ミカド型のミンミンゼミを見ている。

ミカドミンミンン
自宅の庭で見かけたミカド型ミンミンゼミ

 虫つれづれ@対馬v2というブログにはミカド型と普通のミンミンゼミの中間型みたいな写真がある。前胸背まで着色してそれ以外の着色不良みたいな個体で、着色不良が起こるタイミングの問題という見方もできる。
 普通は甲府盆地などを除けば、ミカド型と普通型の中間型のような個体は見つかっていない。それは、ミカド型が斑紋変異では鳴く、色がつきはぐっているだけ。
それでは甲府盆地見つかる中間型のようなミンミンゼミは何なのかといえば、中胸背にわずかながら黒い部分残っているので、ちゃんと着色していることになる。黒い部分が極端に少なくなってミカド型みたいになった”ミカドもどき”ということになる。それでは完全に黒い部分がなくなって、本当のミカド型になるかといえば、それはないのではないかと思う。ミンミンゼミの斑紋が緑色の地に黒い模様が描かれているのだとしたら、黒い模様の要素が”1”にはなることはあっても”0”にはならないと思う。ややこしい話だが、”ミカドもどき”も着色不良をおこせば、ミカド型になる。”ミカドもどき”は斑紋変異の延長線上にあるが、ミカド型はそれとは別の枠にある。”ミカドもどき”とミカド型は似て非なるものである。”ミカドもどき”とミカド型の決定的な違いは”ミカドもどき”が遺伝的に劣性だということにある。
”ミカドもどき”は面白いので、自宅の庭で発生させようともくろんだことがあり、卵の段階で、何度か導入してみたが、一度は出てくるものの後は続かなかった。”ミカドもどき”はほかの地域のミンミンゼミと混ざるとその特性は失われる。しかし、ミカド型は消えない。

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