東京のミンミンゼミは乾燥化で増えたのではない

東京でミンミンゼミが増えた理由(仮説)


1、ミンミンゼミの常識

 乾燥化ニイニイゼミが減少ミンミンゼミ増加説は1980年代半ばに筆者が言いだしたことである。ニイニイゼミの1齢幼虫は細かい根でないと定着できないため、乾燥化で比較的浅い場所の細かい根の発達が悪くなり、ニイニイゼミの1齢幼虫の定着率が下がり、ニイニイゼミが減少、幼虫が水はけの良い環境を好むミンミンゼミは増加したという説である。実際、自宅から1キロ強はなれたつくば市茎崎町の弁天神社では一時期、最盛期には手で採れるほどミンミンゼミが多かったが、最近はあまり多くない。乾燥化でミンミンゼミは増えることはあるかもしれないが、一時的で、長続きはしないようである。
 自宅の庭でミンミンゼミが複数鳴くようになって30年になる。飼育の残りの卵をそのままにしておいたところ発生が始まったのが最初である。一時期個体数が増えた時もあったが、最近は低密度で安定している。個体数が増えない理由は自宅付近が平坦地だからだ。裏隣にも比較的大きな木があるが、ミンミンゼミはたまに鳴き移りで飛んでゆくだけで、ほとんど度発生していないようである。自宅から1キロほど離れた所に園芸店を営む友人の大きな木が茂る広い土地がある。もともと少しはミンミンゼミはいたらしい、そこでミンミンゼミを増やそうとほぼ毎年卵の段階であまり多くはないが導入し続けている。しかし、この場所も平坦地のためあまり増えなかったのだが、どうゆうわけかここ1〜2年急にミンミンゼミが増えてきて、それに合わせるようにに今までまったくミンミンゼミいなかった場所でも複数のミンミンゼミの声を聞くようになったのである。導入していたミンミンゼミの卵は当初、筑波山山ろくやつくば市のもだったが、しだいに東京の飯田橋や御茶ノ水付近のものとなり、ここ5年は平和島公園付近のものである。このこととミンミンゼミの増加は無関係ではないと思われる。
 2010年8月16日、昨年インターネットの掲示板の中にあった横浜の久良岐公園エゾゼミ情報の真相を確かめるために京浜東北線に乗って磯子まで行った。磯子に着いたのは午前9時過ぎ、意外にも駅の周辺はサクラが植えられているのにセミの声がしない。駅の周辺は平坦だから、ミンミンゼミがいなくても不思議ではないが、東京では新木場駅周辺などの平坦地でもミンミンゼミの声がするものだ、それからからするとおかしいように思う。磯子駅を離れると丘陵地となり、丘の上に久良岐公園はある。バスで行けばいいのだが、急な坂道を登って行く。当然ミンミンゼミが鳴いている。ミンミンゼミは開発を免れたような林で鳴いていて、比較的若いサクラなどでは鳴いていない。個体数も意外と少ない。久良岐公園でもこの傾向があり、小集団が点在しているような感じで、記念に植えられているサクラの林ではミンミンゼミは鳴いておらず、ニイニイゼミとツクツクボウシが鳴いていた。結局クマゼミの鳴き声を確認しただけで、”エゾゼミ”はなんだったのかはわからずじまい。
 ミンミンゼミは本来、広葉樹の大木が茂る斜面林やその周辺に多いセミで、生息範囲がなかなか広がらないものである。東京のミンミンゼミも昔は山手線の内側と多磨西部にしかいなかったという。もし、東京のミンミンゼミが今も昔ながらのミンミンゼミだったとしたら平坦地や埋立地の周辺などに広がったりするはずはないのである。


2、東京でミンミンゼミの増えた理由

 平和島公園でミンミンゼミのビデオ録画をしているときに、まるで長野(望月、別所温泉)のミンミンゼミのように高潮音を出しながら歩き回ったり、同じ木で長く鳴くミンミンゼミがいることに気づいた。推測するに1960年代から70年代にかけて長野あたりから、もともといたミンミンゼミとは異なる別の系統のミンミンゼミが平坦地の公園などに侵入し増えた。別系統のミンミンゼミは平坦地でもある程度増え、飛び火するような形で、生息地が拡大することがでる性質を持っている。長野から比べれば、東京は温暖で生息条件がよかったため個体数が増え、もともといたミンミンゼミと混ざったりしてさらに拡大したと考えられる。

戻る