1、微妙に異なる日周性
クロイワツクツクは九州佐多岬から沖縄本島、久米島まで分布するツクツクボウシの仲間のセミです。
クロイワツクツクは早朝から鳴き出して、午前中盛んに鳴き、午後になるとだんだんと鳴かなくなり、
夕方たそがれ時に鳴きおさめをして終わるのですが、島ごとに多少違っています。屋久島の個体は明る
くなると鳴き始め、午前10時ごろ最高潮になり、その後はだんだんと鳴いている数が減ってゆき、た
そがれ時の鳴きおさめはあまり盛んではありません。奄美大島の個体は晴天時には日があたってくる午
前7時頃鳴き出しますが、雨が降りそうな曇天時はそれよりも早く鳴き出します。曇天とも晴天ともつ
かないときは、セミの方も対応がばらばらになります。晴天時には鳴き始めが遅れ分午後まで割と鳴い
ています。たそがれ時の鳴きおさめはハッキリとしています。久米島の個体は早朝から鳴き出し、日中
盛んに鳴きますが、夕方は日がかげると鳴かなくなるようです。
2、微妙に異なる生活環境
屋久島、奄美大島のクロイワツクツクはおもに海岸付近の低木林、人家の生垣など比較的若い低木に多く、
木が大きくなると個体数が減るようです。沖縄本島ではある程度大きな木の横枝にいることが多く、久米島
ではリュウキュウマツでは枝にいますが、海岸付近の大きなモクマオウの林では幹にいます。一般にクロイ
ワツクツクは海岸付近で多く、山のほうでは個体数が減ります。特に屋久島では海岸から少し内陸に入った
だけで、急にいなくなります。
3.微妙に異なる鳴き声
クロイワツクつくの鳴き声は図1の波形のように一回目の強音あと一瞬音が途切れ、少しの弱音のあと二 回目の強音そしてやや長く弱音が続いて、再び一回目の強音と繰り返し長く鳴きます。スペクトル分析など で、以前から島ごとに違いがあることが言われています。周波数の分析などはできないので、一回目の強音 と二度目の強音の間の長さに注目してみると、図1はいささかできすぎた資料ですが、屋久島, 奄美大島、久米島と南へ行くほど、相対的に長くなっています。この傾向は 図2のようにオガサワラゼミが顕著に表れています。